社会福祉法人日本ライトハウス点字情報センターさんから、先日お便りを頂戴しました。内容は2020年に刊行された『ぼくとキキとアトリエで』という読み物の点訳・提供のお知らせでした。同法人は視覚特別支援学校用点字教科書や、点字図書の提供施設という役割を担っておられます。点訳については著作権法第37条1項で定められた規定によって、印税免除の他、点訳に伴う止むを得ぬ表記の変更も認められています。これらは一般的な出版条件と比べれば異例に映るかもしれません。
しかし目の見えない方、見えにくい方のために図書や雑誌を点字出版して提供することの意義や複雑な工程作業を考えると当然のことだと考えられます。今回の通知で私が特に何かをせねばならないということはないのですが、著者としてはやっぱり同書の点字出版が出て読者がどんな感想を持ったのかが知りたいものです。というのは『ぼくとキキとアトリエで』の中で絵を描く行為を頻繁に文字描写しており、中には登場人物が描く絵を文章でのみ表現している箇所もあります。それがどのように伝わったかにとても興味があるのです。
もう十数年前のことですが、某大学で絵本の講座を行っていたときに、学生さんの中に視覚障害を持った人がいらして、授業の中で私が自作絵本を朗読するとその学生さんの隣で先生が1ページづつ説明をされていました。なのに私の朗読はあまりに早すぎて、先生の説明が追いつかなかったことがありました。どうして私はもっとゆっくり読まなかったのか、、、その学生さんと先生に本当に申し訳ないことをしたと悔いた記憶があります。もし点訳された絵本があれば、同時進行で朗読を体感してもらえたかもしれない。帰りの電車の中でそんなことを思っていました。
実は私の点字本はこれで2冊目で、以前『焼く肉を食べる前に。』という読み物も点字出版していただいています。費用がかかるであろう点字本に選んでもらったのだから、今回の『ぼくとキキとアトリエで』も点訳して出版された際には、是非手に取って読んでもらいたいものです。それで楽しんでいただければうれしい限りです。
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