109 <個展『絵本『みあげてごらん』原画展』(2004年)>
(『みあげてごらん』という絵本をライフログに載せていないのは、現在取次店経由の販売ルートに乗っていないようで、書店購入に難があるから。ネットでも在庫無しという表示が多くて、いったいどうしたもんだか…。)
企画展というのはどうも私向きではないのかもしれない。ギャラリー側からの要望で行う個展は、光栄至極身に余るにもかかわらず、何かしら身が入らないことがある。短絡的な話しだが身銭を切ってするほうがやる気になるのは当然だと思う。そこへきて絵本の原画展である。本来はページネーションの中でこそ理解される絵を、会場に羅列したところで、果たして見ていただく価値はあるのだろうか。これは私においてだけでなく、原画展という名の展示内容が横行する昨今の風潮全てにも言えることなのだが。
何はともあれ、原画展と名を売って行った展示だっただけに、本命の絵本はそこそこ売れたようだ。ただ展示の仕方や過去の作品の蔵出しには少々うんざりしてしまった。個展とは初見の生々しさこそが楽しみだと思うので、印刷後のおから状態の原画や何度も出している出がらし旧作で空間を埋めても、やっているこちらからは充分な楽しさが醸し出せない。せっかく来ていただいたお客さんに、そんな気持ちが少しでも知れたら申し訳ない。そう思って、ギャラリーではそれなりに張り切っていた記憶がある。
結局「絵本『みあげてごらん』原画展」は絵本を売る為の企みであり、そのことだけを考えれば可もなく不可もなかった。しかし個展独自の特殊な空間を持てたかと言うと、否やである。そのことに悔いさえ湧いて来なかった。その後も『みあげてごらん』という絵本の販促プロモに付き合うことになったが、なかなかメンタルの難しいところがあった。唯一良かったと思えるのは、この本を通じて多くの人と知り合いになれ、今も個展には顔を出していただける関係を築けたことだ。