人気ブログランキング | 話題のタグを見る

266 <音楽えかきむし〜イーグルスは飛ばなかった(下)>

イーグルスのファーストアルバムは清涼な水のようだ。脂ぎったところがなく、風を切る心地良さがある。有名どころではないが「今朝発つ列車」や「哀しみの我等」などを聴くと、後期の官能的なサウンドが嘘に思えるような純粋さに満ちていて、歌を唄う人も作る人もまだ頼りないのがつかみ取れると思う。曲もメンバーも幾分青くて初々しい。業界ズレをしていないのだ。「テイク・イット・イージー」はジャクソン・ブラウンのヴァージョンに比べると曲との相性が抜群に良くて、カントリーロックの新人バンド然としたデビュー曲だと思う。


『ならず者』はグレン・フライ&ドン・ヘンリーのライティングコンビが確立されたという意味で、屋台骨が出来上がったアルバムである。ドゥーリン・ダルトン物語を軸に全体をコンセプトアルバムとして展開し、ムードは『ホテル・カルフォルニア』の安宿ヴァージョンという感じ(笑)。カントリー・テイストの強さから推測するに、バーニー・リードンの貢献度が高さそうなのと、ドン・ヘンリーのバラードシンガーとしての才能が開花している。とはいえ、近年タイトル曲がクローズアップされ過ぎてかなり食傷気味。


『オン・ザ・ボーダー』での最も重要な曲は、ラストの「我が愛の至上」。日本では評価自体がない曲だが、さわやかな鬱状態?がレコードの溝に記録された一曲。ここからイーグルスは後期の官能サウンドへ分け入ったと思う。またしてもドン・ヘンリーのヴォーカルが悩ましい。他にも「恋人みたいに泣かないで」やトム・ウェイツも真っ青の「懐かしき'55年」は素晴らしい出来で、他の妙にハードになった音作りが耳障りだったりする。たしかドン・フェルダーはここから加わったはず。徐々にカントリーテイストから脱皮し始めている。


30代に入ってすぐに今度は腰を痛めた。しばらく寝たきり状態になってしまい、寝床で再びイーグルスに接したら、十代の頃あれほど小馬鹿にしていたグレン・フライが一番いいではないか?!何回聴いてもそう。ドン・ヘンリーのしゃくり上げるような苦悩のヴォーカルには「何をグダグダ小難しいことをいっとるんだ!」と腹が立ってくる始末。こんなに適当に変わっていいものなのだろうか(笑)。自分が身体を壊した時に聴いて評価が変わる珍しいバンド、イーグルス。次はどのタイミングで、誰が一番いいと言い出すのか、怖くもあり楽しみでもある。


266 <音楽えかきむし〜イーグルスは飛ばなかった(下)>_f0201561_74147100.jpg
リンダ・ロンシュタットといえばイーグルスの元産婆役。滅法多作でかつては敬遠していたが96年『Dedicated to the One I Love』を聴いて深〜く後悔した。全編子守唄アレンジのカヴァー集で耳が溶けること確約。彼女の仕事を評価し直すきっかけになった一枚。今ではこの季節から冬にかけてのマストアイテム。
by ekakimushi | 2010-10-20 07:45 | 音楽えかきむし | Trackback | Comments(2)
Commented at 2010-10-20 15:44 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ekakimushi at 2010-10-20 15:54
歳は食ってもイーグルス、生イーグルスがどんなだったか、詳しく聞かせて下さいませ。ますたぁもイーグルスが好きだとおっしゃってたので、私のような邪道な聴き方は困ったもんだと、首を傾げておられるだろうな…と思っております(笑)。

今日11kmほど走ってきました。一応これで本番までのランニングは終了です。調整も順調なので、レースがとても楽しみです。後は台風だけが心配です。来るなよ〜。