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281 <音楽えかきむし〜ツェッペリンは行き先知らずの飛行船(中)>

同じようなことを同じように演らない(演れない)。これがゼップの最もヒップなところだと思う。解散後ファームという地味なバンドでポール・ロジャースと組んだペイジはこんなことを言っておりました。「何回唄っても同じように唄うことのできるのがポール・ロジャース。毎回違う唄になってゆくのがロバート・プラント」だと。まさにこれはゼップの音楽全体にいえることです。『コーダ』を含めた9枚のスタジオ録音盤に、似たアルバムは一枚もなく、ファンも関係者も、おそらく本人達にも、次にどんな作品がやってくるのかわからなかったのでは。


その最大の要因はボンゾとペイジの化学反応だと思います。ボンゾはもともと一風変わったタイム感を持った人でしたが、JB'sのジャボやミーターズのジガブーなどのブラックリズムに狂い出してからは、リフ名人のペイジがイメージを曲にし易い環境を頻繁に提供できたのではないかと推測します。特に一拍目に強いビートが入るJBファンク特有のリズムはボンゾ独自の変拍子と相性がよく、ゼップサウンドの跳ね方粘り方に多大な影響を与えています。そこにペイジがキャッチーなリフを重ねてゆく。曲の原型が出来上がる。こんな絵が私の頭の中に浮かぶのです。


行き先がわからないのはライブも同じで、ゼップ以前にワンステージで2時間も3時間も続けてライブを演る慣習はなかったとミック・ジャガーは語っていました。端正に計算されたステージをするのではなく、時間が経つに連れて演奏にグルーヴが出てくると簡単には終らなくなって、結果一曲一曲が長くなり全体が3時間もかかるステージになる。ライブアルバムやブートを聴くと?というものもありましたが、曲が生き物めいた膨張をするのがスリリングで、決まる時は滅茶苦茶格好良く決まる。決まらない時は、荒っぽくぶった切って終らすのです(笑)。


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1997年に出たBBCライヴセッション。初めて聴いた時、全身に鳥肌がたった本物。生音然としており、しかも音が近い。これで1976年の『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』は不要となった。
by ekakimushi | 2010-11-21 00:45 | 音楽えかきむし | Trackback | Comments(8)
Commented by takuzo at 2010-11-21 09:35 x
前回ご指名いただきありがとうございます!遅きに失して今からコメントの上にさらになんですが、、、実はこのあたり通して聞いたことがありません!!ふふ(照)。私の音楽デビューの際には70年代他のバンドに同じく既にZEPは伝説のバンドで、これ聞かなきゃ、みたいなのはあったけど食指が動かないというか、、とはいえドアーズなんかやキンクスは後に聞いてきたのにいわゆる「ハードロックの元祖」のように言われていたのが敷居が高かったのでしょうかね。、、ギターソロ早引き、とか様式美、という分野がどうも苦手だったのでミュージックライフやバーンも読まなかったし。。でも今回のボンゾさんのジガブージャボがらみのコメント読むと気になりますね。そういえばミーターズの解説でそんなことが書いてあったような、、アラフォーでZEPデビューしてみようかな、、、
Commented by MICHIO at 2010-11-21 14:03 x
BBC Sessionsには私も衝撃を受けました。ボンゾが屋台骨になっていることがはっきりとわかる曲の数々です。故あって数週間前にまた夫婦で聴いていました。酒が進むわ。
Commented by ekakimushi at 2010-11-21 21:29
<takuzoさんへ> 知りませんでした。勝手な指名をお許し下さい。ゼップをハードロックの括りに収めたがる類いの人が多いのは承知していますが、私のようにファンク趣味の人間にとって、唯一無比と言えるゼップの黒人音楽へのアプローチは聴けば聴く程含みがあるようで、飽きが来ません。デビューをお待ちしております。40才でも50才でも、遅いということはありませんから。
Commented by ekakimushi at 2010-11-21 21:34
<MICHIOさんへ> 夫婦で聴き夫婦で語る『BBC Sessions』。理想的ですな。私なんかいつも一人っきりですよ(笑)。ああ、羨ましい!
仰せの通り『BBC Sessions』ではボンゾの太鼓の生々しさが素晴らしいです。あれだけズッシリ聴かせてくれれば、ボンゾの死がゼップの解散理由であったことが明白です。ボンゾこそは絶対に欠けてはならないピースだった。お酒が進むのはこういったところでしょうか?
Commented by onthenodo at 2010-11-23 05:27
流石ekakimushiさん、ブラックミュージックラヴァーとしての視座からの鋭いツェッペリン評ですね。やはり彼らの音楽をハードロックの括りに押し込めるのはどだい無理がありますよね。しかし実際ZEPは、どう考えてもハードロックの王座に君臨する揺るぎない存在でもあるわけで、その事実(そしてそのイメージ)が、幅広い音楽性の評価に繋がらなかったり、食わず嫌いを助長してしまうのだと思います。と、書いてはみたものの、最近の音楽事情に疎い私ですので、若い音楽ファンがZEPをどう捉えているのか、全く知りませんし、今回ekakimushiさんの“狂熱”にほだされて^^、およそ四半世紀振りにあれこれ音源をつまみ聴きしてみて、自分自身、無意識のうちに『ZEP =ハードロック』の図式にこだわっていた事に気づいた次第です。
Commented by onthenodo at 2010-11-23 06:07
ここで情けない告白をしなければなりません。中坊頃より10代を通していっちょまえのツェッペリン・ファンを公言していた私ですが実は持ってるレコードは『CODA(最終楽章)』一枚っきり!……これを恥といわずしてなんと言いましょうか?私にZEPを詳細に評する資格はございません。なので、ここは昔話しでお茶を濁させて頂きます(恥笑)。中学の時に、同じくビートルズ・ファンだった同級生のY君がある日、一枚のLPジャケットを自慢げに見せました。どこかの国の大統領達の様に、崖に刻まれたメンバーの人面像。ディープ・パープルの『イン・ロック』でした。初めて耳にしたハードロックに私はブッ飛びました。しかしヘソ曲がりの私でしたから、Y君に差を付けられた気がして大変悔しく、対抗上、音楽誌の記事で名前だけ知ってて、なんか凄そうなレッド・ツェッペリンを持ち上げ、確かラジオでエア・チェックした『胸いっぱいの愛を』や『リビング・ラビング・メイド』『ハートブレイカー』をようわからんけど無理矢理何度も聴き、ZEP党である事を宣言してしまったのでした(中学生の耳にはパープルの『スピード・キング』の方が圧倒的に分かり易かった…)。
Commented by onthenodo at 2010-11-23 06:29
それからはだんだんとほんまにツェップにハマっていったのでした。お昼休みにDJ番組を持っていた放送部の予算で『II』を買い、よおし『胸いっぱいの愛を』をかけるぞ〜!と意気込んでいたのに、ウィングスの『あの娘におせっかい』で先生に“こんな踊るような音楽で昼飯喰えるか!”と説教され、これがあかんのやったらもっともっとウルサいツェッペリンなんかとんでもないなぁ、とビビリ、あえなく自粛(情けない…)。でもパープルの『ハッシュ』はかけたような記憶もあるんですが、ようわかりません。NHKヤング・ジョッキーの渋谷陽一の弟子?みたいな私の布教活動の成果もありツェッペリンはクラスメートの支持を集めてゆきました。その過程で『IV』も誰かが買ったので貸してもらい録音。その後高校にいったらそれこそZEPファンなんてうじゃうじゃいるわけで、結局『プレゼンス』も『フィジカル・グラフィティ』も身銭を切らずに済ましてきたわけなんです。あっ、昔話しに夢中で、まだ好きな3枚の、そのわけを書いてませんでした!せっかくノって来たのに、残念ながら時間です。また次回、ということでお願いします。
Commented by ekakimushi at 2010-11-23 11:53
お帰りなさい。早々の書き込みをありがとうございます。
そうなんですか…人に歴史あり、音楽遍路に想い出あり、といったところですね(笑)。

私と似たところのある境遇です。私も周囲にパープルファンが多くて、もうそれが迷惑で(爆)。たった半年で飽きが来たパープルと違って、謎の多いゼップの耐用年数は永く、音楽への興味が今なお大幅に減っているとは思われません。確かにハードロックの王者ではありましたが、それも十代までの認識で、こちらが歳を取れば取ったで違う旨さを賞味できるのがわかった時は、得難いバンドだなあと感謝したことを憶えております。

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