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695 <マイ・フェイバリット・アクトレス 3(下)>

今回の<マイ・フェイバリット・アクトレス 3>の人選をしていて、気になったことがあります。60代70代と銘打ったのはいいのですが、60代の女優さんに多く反応しているのです。明確なライン分けなどはないものの、映画やテレビドラマでの体験数が表れているのではないでしょうか。未だ現役バリバリという人が多く、この世代の女優さんが引退する頃には、きっと私も女優さん全般に、某かの興味が失せてしまうような予感がしてなりません。若くて活きのいい女優さんや、色香が漂ってくる年頃の人も捨て難いですが、長い間目にしてきたベテラン俳優が、ある日映画のスクリーンやテレビの画面から、消えるようにいなくなってしまうのは、自分の年齢を逆光で眺めているみたいで儚いです。


<岩下志麻>
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ひところテレビCMでよく目にしましたが、ここ最近は露出が減っているような印象があります。74歳で、役柄としてドンピシャというものが見当たらないのか。私の勘ぐりですが、『極道の妻たち』シリーズに出演したことで、芸幅が広がったものの、あまりに凄みのあるその役が邪魔をしているのではないでしょうか。凄みといえば『鬼畜』のお梅役は心底恐かった!冷徹な美女がこんなに似合う女優さんもいないから、いろんなタイプの作品に出演しづらくなってしまったのかもしれません。本当ならここ10年~15年の作品数が、もっとあってもいいのですが。先日久しぶりに観た『秋刀魚の味』は小津安二郎監督の遺作ですが、高度経済成長期にも日本には悠々とした時間が流れていたことを感じさせる作品で、岩下志麻が演じる快活な嫁入り前の娘役は、おそらく当時の日本の新しい女性像だったのではないでしょうか。あのときの彼女にしかできない思い切りのよさや躊躇いが溢れていたと思います。


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<酒井和歌子>

この人は変わらない。そう思った最初の女優さんが、酒井和歌子でした。私の初見は、学園もののテレビドラマ『飛び出せ!青春』の先生役でした。今64歳とのことで、当時は22〜23歳だったのですね。何と可愛らしい人だと、一目惚れしたものですが、ウチの母親が横から「この人、昔からいてはるで」と役にも立たない情報を入れてきたので(笑)、かつての出演映画など(若大将シリーズやテレビの青春もの)をチェックしていました。清純派の王道をゆく女優さんで、役柄もおっとりしたお嬢さん風の配役が多かったのではないでしょうか。元気はあるのですがバイタリティまでは感じさせない演技のせいか、どこかスケールの小さいところがあって、映画よりもむしろテレビ向きの役者さんになってしまったのかもしれません。確かに長らく変わらなかったのですが、最近「おばあちゃんはミニ丼ね」というセリフの某牛丼チェーン店のテレビCMに出演していて、あれはやめてほしいと思いました(苦笑)。




<吉永小百合>
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変わらないといえば、まさにこの人!的確な表現ではないのですが、仙人のような、年齢不詳状態のまま御歳69歳!しかもトップ女優、看板女優として50年以上走り続けてきて、今なお主演の新作映画が封切られているのですから、本当に奇跡の女優さんです。あまりに安定した俳優活動が続いているので、吉永小百合が欠落した日本映画界が容易に想像できないほど。今や日本を代表する女優さんであることに異論はありませんが、彼女に大女優の風格が備わり始めたのは、たぶん1980年代中頃の『おはん』『夢千代日記』あたりからではなかったでしょうか。その前の『細雪』ではまだ評価がそこまで達していなかった記憶があります。ということは大女優になってからすでに30年が経過しているわけですか。積み重ねたキャリアは嘘をつかないのですね。2012年の『北のカナリアたち』では、普通に40代の役をこなしていました。そして本当にそう見えることが(あの鼻声も不変!)、吉永小百合という俳優さんの底力・個性・特殊性だと感嘆した次第です。
by ekakimushi | 2014-03-27 19:21 | 私のお気に入り | Trackback | Comments(0)