914 <スケッチスケッチ>*
以前ある方に「よく見て描きなさいよ」という言葉をいただきました。それがストンと腑に落ちまして、さっそく取材に出た折にスケッチ小僧となっているわけですが、『描く』のはそれほど大変ではないのですが、『よく見る』というのが大変だと感じます。解析を伴う視点というのは慣れないと暇がかかります。絵に移す作業を後に残して見ているわけですから、責任がある気がするのです。都合良く見ることもできないけれど、いちいち細かいところまで念入りに見てばかりいるわけにもいかない。その線引きが大事だなあ。
しかも疲れる。同じ時間を外で立って描くのと、部屋の中で椅子に座って描くのとでは全然疲労度が違ってきます。それでも気張って描いたものを家で見ていると、それなりに絵にしている意味合いが残ってくるから不思議です。匂いであったり空気感であったり、会話や天気のようなものまでスケッチには記憶されています。私は今まで「よく見て描く」ことを、自分で勝手に疎かしてきた人間なので、そのいい加減さが眼に余って来たのでしょう。嘘を描くのにもよく見て描かないと。今頃こんなことをしているなんて、恥ずかしいなあなんて全然思わないのですよ、これが。むしろ妙にうれしくて…(笑)。
(*日記No.363 2011年6月13日掲載のリメイクです。)