人気ブログランキング | 話題のタグを見る

923 <いなす季節>

私の作業部屋は東向きです。冬場は朝日が部屋の奥まで差し込んで、部屋全体がとても暖かい。夏場はどうかというと、やっぱり暖かい(笑)。朝のだいたい7時半には机前に座っていますが、天気のいい日だと豪快に熱射されています。それでも午前中から冷房にあたりたくないので、そのまま作業をしています。もちろん熱々のホットコーヒーを飲みながら。アイスコーヒーなどもってのほかです。

子ども時分に夏になると、近所のおじいさんが家の前の道に簡易ベンチを出して、ステテコ・シャツ・腹巻き姿でうちわを仰ぎながら、通りを行く人たちと談義をしていました。昭和な姿ですね。そのベンチにはいつも熱いお茶が置いてあって、汗をかきながらおじいさんはズズーッとすすっていたものです。子供心に、冷えた麦茶を飲んだ方が絶対美味しいのに、といつも思っていました。

二十代の会社勤めの頃、私は営業をやっていました。暑い日中、よく喫茶店でアイスコーヒーを飲んだことを憶えています。たまに営業の上司と一緒にお店に入ると、その人は決まってホットコーヒーをたのんでいました。この暑いのに、なぜ熱い飲み物を飲むのだろう?といつも不思議でなりませんでした。暑い季節には、飲み物は冷たければ冷たいほどありがたいに決まっている。私はそう信じて疑いませんでした。

しかし今の年齢になって、よくわかります。幾ら夏でも、人の身体は、冷えた飲みものをそう多くは望んでいないことを。熱い飲み物を入れてやると、冬だけでなく夏でも、身体も気持ちも落ち着くことを。海水浴へ行き、スイカを食べ、クーラーを浴びて、冷たいドリンクをガブ飲みする、真正面から夏にぶつかるような過ごし方を、いつの頃からかやらなくなりました。夏は今の私にとっては、いなす季節になったようです。

923 <いなす季節>_f0201561_157371.jpg
            添付されている画像の無断転用・使用を禁止いたします。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    
by ekakimushi | 2016-07-26 15:14 | 絵のこと | Trackback | Comments(0)