965 <わかること わかった気になること>*
自分自身に照らし合わせてみて、今私はわかっている気になっているが、その実さっぱりわかっていないな、そう感じることがあります。そんなとき話し相手は「お前は今、わかっていないだろう?」などとはまず言いません。しかし私がわかっていないことは、しっかり悟られています。私がわかっていないことを承知の上で、便宜上わかっているものとして扱っている。一方の私はわかっていないことを悟られているのを知りながら、今更わかっていないとも言い出せず、わかった気になることでその場をやり過ごしている。これってお互いはお互いの事をわかっていることになるんだろうか?ならないんだろうか?
こういうなんとも不条理なケースが身の回りに多くあるのを感じます。言葉や態度に出して他者との相互理解を深めるのはいいけれど、ひとつひとつをきっちり馬鹿丁寧にやっていられない世の中でもあります。しかし机の上で絵を描いていて、ふと思い出すことがあるのです。あの日あのとき、私はわかっていなかったな。それを見ていたあの人は、何も言わなかった。私を見逃してくれたのか、それとも見捨てたのか、どっちだったのだろうかと。