079 <描きたい病>
もう10数年前ですが、映画館で上映作品を観ていて途中で急に絵が描きたくなり、結局半分も観ないで退席して帰宅し、シコシコと絵を描いていたことがありました(その後も三度ばかり)。我慢すればいいものですが、どうにも映画に集中できなくなるですね。全く困ったもんです。入場料を返してくれとも言えず、描きたい病を修めるためだけに泣く泣く映画を諦めたあの日でした。
そのくらい絵を描くのが好きなのです、と言いたいわけではなくて、絵を描きたい気持ちが他のことをする集中力を邪魔をして削いでしまうことがある。これはどうしたらいいのか?ということを問いたいのです。絵を描くことだけではなく、食事や排泄なんかでも似たような生理感覚を味わうことがあります。とにかく今処理しなければならない最初の懸念事項みたいなものです。
私自身のことなのに、自分の意志や順序立てがまるで無視されて、本来優先されるはずの物事が絵を描くことの後塵を拝するわけです。まるで我が儘なだけです。こういうのがあまり好きでない私は、描きたい病をあまりよく思ってはおりませんで、機会があれば一度徹底的に戦って押さえ込んでやろうと思っていました。人の時間を好き放題に使わせてたまるか!と。そしてそのチャンスがきたのです。
つい2週間ほど前のこと。午前中にジョギングをしていました。近く行われるレースに参加する為に、コツコツ走っており、その日は20kmを走破する予定でした。たまたま走る前にちょこっとだけ絵を描いてから出たのです。これが悪かった!走り出して30分ぐらい経つと、急に絵のことが気になり出してもう全く集中が出来ない状態になりました。戦うとか言いながら5kmぐらいだけ走って、そのままサッサと帰宅して絵を描いている私って一体…
結局戦うも何も、描きたい病の言いなりでした。あのまま走っていられたかというと、たぶん無理だったと思います。邪念が多過ぎて、走る心意気など消えてしまいましたから。こんな弱い私ですから、描きたい病に逆らえない人生を送っている限り、いつどこで発病して自分のみならず周囲の人に迷惑をかけるものか…。そんな心配、したって始まらないですよね。描きたい病は描いて治すしかないんだから!