090 <時間様>
昔印刷会社に務めていた頃、金曜の夜に仕事が入ってきて月曜の朝にお客さんに届けるという非情なスケジュールに泣かされたことが何度かありました。その土日は家でじっくり絵を描こうと決めていたのに、結局会社から一歩も出られず終いだったことを今もしつこく憶えています。あのときは本当にバランスの舵取りが厳しかった…。結局時間は帰って来ないから、どう考えたって自分で持って逃げないとダメだなあと思ったものでした。
私は典型的な朝型人間なので、午前中が最高のゴールデンタイムです。ここでダメなものは、午後になっても絶対ダメ。そういう人です。午前中をもっと多く使いたい。そうなると前の夜は早く寝ないといけない。世間並みの人付き合いを考えると、なかなかまかり通らない生活信条と言えそうです。このところ時計に振り回される毎日を送っていたのですが、ようやく一段落いただけそうです。時間様ににらまれたまま絵を描くのはやっぱり苦手だなあ。絵が時間様を嫌がっているような気もするしなあ。
もし効率を優先しない社会ができたら、絵を描く人はゆっくりやるでしょうね。筆の速度も変わるかもしれない。人の表情も違ってくるだろうし、主題そのものがガラッと別なものになるでしょう。私はどちらかというと、そっちに向いていると思います。きっと体内の時計が産業革命以前の家内制手工業のものなのです(笑)。21世紀の怒りっぽく荒っぽい時間様の仕打ちから少し距離を置いて、ちょっくら旅に出てきます。来週の火曜には戻ってきます。