人気ブログランキング | 話題のタグを見る

134 <あるふしぎ>

昨年末のある記事です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 福音館書店(塚田和敏社長)は28日、月刊「たくさんのふしぎ」の2010年2月号として発売した「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」(文・絵、太田大輔)を販売中止にすると、ホームページで発表した。

対象年齢は小学校3年生からで、発明家のおじいちゃんが2人の孫に江戸時代の暮らしを説明する内容。おじいちゃんはたばこ好きの設定で、喫煙したまま孫たちと同席する場面が何度も描かれている。

喫煙に反対する団体などから「たばこを礼賛している」「たばこ規制枠組み条約に違反する」といった指摘があり、同社は販売中止を決定した。

ホームページでは、塚田社長名で「(たばこは)小道具として使用したものであり、喫煙を推奨したりする編集意図はまったくありません」と説明。「しかしながら、子どもの本の出版社として配慮に欠けるものでした」と謝罪した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一度出版に踏み切った作品が、外部反対勢力からの指摘でボツになる。それも天下の福音館書店の、言わずと知れた「たくさんのふしぎ」シリーズで。作者の心情はいかなるものでしょうか。私はこの本を読んでいないので、内容については何も言えないのです。


この出来事に関してのネット記事を捜して読んでみました。両方の立場からの見解がありました。児童書でありながら子どもの前でたばこを吸う場面が幾度か出てくることを問題点としている某団体側。たばこはあくまでも小道具として用いられているのであり、出版中止は某団体による表現の自由への弾圧の受け入れを意味するという作者擁護派。現実的な結論は福音館書店による謝罪であり販売中止決定です。


この結末が下った後ろにどういうやりとりがあったのかはわかりませんが、おそらく担当編集者は問題ないと考えて作業を進め、指摘を受けた段になって社の方針にシフトを変えさせられ、表向きにはその旨を作者に了承してもらい、作者は出版中止決定に従った、こんな構図が見えます。たくさんの時間をかけて醸成させるように良書を出版する福音館書店らしからぬ、事なかれ的な締め括りのような気がしてなりません。作者は味方であるはずの出版社側が反論主張を通さず、販売を翻したことで、完全に孤立したことでしょう。


私は自分でもヒステリックな嫌煙者だと自覚することもあります。世の中も嫌煙者の理論は大手を振ってまかり通るご時世です。私も世の中もたばこに関しては、随分神経質になったものだと思う。ただその変化が正義になりかわり、他者を弾圧する暴力になってはいけない。また出版社ならびに担当編集者は自社の利益だけでなく、作者の太田大輔さんが次へ向けて始動できるよう全面的に支えてあげてほしいものです。今回の出来事は作品にとってみたら、生き埋めに等しいと思う。


134 <あるふしぎ>_f0201561_740368.jpg
    
by ekakimushi | 2010-01-27 07:41 | 絵のこと | Trackback | Comments(0)