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195 <音楽えかきむし〜晴れた日の山下達郎>

気持ちのいい晴れた日が続きます。このところ山下達郎の『COZY』をよく聴いています。発売当初(1998年)はどうも馴染めなくて、じっくり聴いたとは言えなかったアルバムですが、10年以上経った今になって妙に心に滲みます。聴いていて心が落ち着きます。今回の音楽えかきむしは『COZY』を聴いて感じたところを。


初聴きの時は、アルバムの全体を統一する何かを感じることがなくて、達っつぁんらしくない一枚だなあと思っていました。逆にそれが狙いだと思っていました。でも今は違います。非常にまとまった印象が感じられます。不安定な心境の主人公が登場する曲に、なぜかとても共感ができます。


意外にもスローなナンバーが多くて、アルバム全体が一見地味目な印象を与えますが、今となればこれが肌に合う理由だと感じます。歌詞の物語性と、音の密室的な心地良さとを、上手〜く溶け合わせているなぁ。歌のうしろに街の風景が浮かび上がってくる曲も多いです。達っつぁんは根っからの街っ子なんですな。


そこへ松本隆が加わっているから、余計に都会の匂いやかつての街の有様への憧憬が強く伝わるのかな。「いつか晴れた日に」は、昭和30年代の東京を遊び場にしていた人特有の喪失感があるような気がしますし、「DREAMING GIRL」を聴いて見える景色は、まるでかつて藤子不二雄の漫画の登場人物達が遊んだ広場や道のようです。


達っつぁんお得意の夏真っ盛りの弾けたサウンドも健在。なかでも『夏のコラージュ』が好きです。これぞ伊藤広規&青山純というビートが走り出す瞬間が最高。夏の海辺の風がスピーカーから舞い込んできます。「MAGIC TOUCH」や「ヘロン」といった決めの曲は先代玉ノ海クラスの横綱相撲という感あり。


今の私がこの『COZY』を聴いてすんなり受け入れられるのは、まだ心が穏やかでない年齢の主人公が、都会という舞台で純粋無垢に生きている姿を扱った曲(もしくは振り返ったり観察した曲)が幾つも収められているからでしょう。健気さに弱い私は、こんな純度の高い作品に出会うと、簡単にやられてしまう。やっぱり達っつぁん名横綱だ。


私が大好きなタワー・オブ・パワーの全盛時代に在籍していたレニー・ピケットが、「月の光」という曲で客演しているのも堪りません。(これだけで本作は買いです!)かつてと全く変わらない超高音で消え去るテナーサックスが聴けます。なんて素晴らしい演奏と起用なんだろう。何度聴いても鳥肌が立ちます。


今日も気持ちよく晴れた一日になりそうです。さあ、これから走ってくるとしよう!


195 <音楽えかきむし〜晴れた日の山下達郎>_f0201561_7462387.jpg

by ekakimushi | 2010-05-31 07:49 | 音楽えかきむし | Trackback | Comments(0)