356 <私のお気に入り:『プンク マインチャ』(下)>
版元の営業努力が足りないと福音館だけを責める気は毛頭ありません。それを云うなら、こんな素晴らしい絵本を買ってこなかった日本の読者にも大きな責任があります。売りやすく当たり障りのない商品を連作にして、次から次へと世に出す出版社、それを有り難がたがる書店、自分で感じて考えて判断しない、歯抜けの幼児みたいな大人たち。『プンク マインチャ』は業界内の負のサイクルの中で、長い間無視されてきたのだと思う。
時が経ち、偽物が消えて本物が生き残ったとするなら、『プンク マインチャ』は20年前に不死鳥の如く蘇り、作品本来の生命力を失うことなく、今も本屋さんの絵本棚に永遠の指定席を持っています。最後の見開き場面で、カラスから娘の死を聞きながら、櫛で髪をとぐ継母の姿。喪失してからでないと我が身を振り返ることができない人間の性が、深いため息とともに冷ややかに描かれています。秋野亥左牟一世一代の名場面は、今も語ることがあまりに多いです。