583 <見ろと奨められて>
鬼海弘雄という写真家を私は知りませんでした。現在67歳(or68歳)の現役バリバリの人で、今回が関西では初となる大規模な展覧会だったそうです。すべてモノクロの作品で約200点と数が多い。何と言っても強力だったのは40年以上にわたって継続されている<PERSONA>シリーズでした。
ちょっと危なっかしい、しかし市井の生活感溢れる人々が一点につき一人、次から次へと写し出されています。タイトルのユニークさが作品に深い趣を与えていて、こればかりは実際に見て読んでもらわないと説明のしようがないので、ここは伊丹市立美術館のサイトから解説文をコピーさせていただきます。
<写真にしか表現できない「ちから」とは何かという直接的な問いかけに真っ向から取り組み、人間という摩訶 不思議な生き物に対する尽きない好奇心と愛情が注ぎ込まれた作品群は、普遍的な「人間」の姿の迫力と美しさ で観る者を圧倒します。>う〜ん、これでわかってもらえるでしょうか…全く伝わってこないような…
町の歩き撮り<東京ポートレイト>の人臭さも最高で、<PERSONA>シリーズと共通していえるのは、人間の営みに作者が徹底的に執着していることです。もしかしたら奨めてくれた3人の念頭にあったのはそのことなのかもしれない。だとしたら、私は大いに恐縮いたします。私はあんなに人には近づけないです。
鬼海弘雄の作品はタイトルも合わせてユーモラスな面を持ってますが、どこか神明質な空気も感じます。人物写真が全て役者さんに見えてしまうと気付き、おそらく対象となる人間をいかに写真世界に生かすかについての演出に苦心されていると思いました。その美意識はあらゆる抵抗力が非常に強いものでした。
見ろて奨められて見にいった展覧会でしたが、幸い当たりでした。そして3つの違った場所で、3人の別な人から、全く同じことを言われたら、信用しようという気になりました(笑)。彼らには私の喜ぶ姿が見えていたのです。まさに脱帽! (伊丹市立美術館 http://artmuseum-itami.jp/exhibition/1204/)