730 <バルテュス展へ>

今から30年前の1984年7月1日。日曜だったその日、私は一人でバルチュス展を見に行った。人の入りは思ったよりも少なかった。宣伝は大々的だったが、当時日本でバルチュスはそんなに知られていたとは思えなかった。展示そのものは食い応えのある内容で、朝一番に京都市美術館に入って、昼過ぎまで館内を何度もうろうろ往復して見たことを憶えている。慣れない靴を履いて出かけたせいで、途中から足の裏が怠くなって困ったが、何度も見たい気持ちが足の痛みを押しのけたのか、長時間の滞在になってしまった。そのうちどこかで見ることがあるさ、などとタカを括っていたのだが、まさか30年も見ることがないとは思いもしなかった。

今日ようやくバルテュス展を見に、同じ京都市美術館へ行ってきた。人の入りが思いの外少なかったのも似ていた。違っていたのは、バルチュスがバルテュスに変わっていたことぐらいか。(あ、こちらの年齢も。)あの『美しい日々』や『樹のある大きな風景』を再び見ることができたのは嬉しかったが、23歳の私を喜ばせた『コメルス・サンタンドレ小路』や『山(夏)』『部屋』といった作品に会えなかったのは何とも残念だった。反対に『読書するカティア』『夢見るテレーズ』が目の前に現れた瞬間、バルテュスの前では年齢は関係ないとばかりに、53歳の私の心はカッ〜!と燃え上がった。これこれ、この気持ちが欲しくて見に来たんだ!

秘密、日常、寓話、時間、神秘、記号、永遠、夢…バルテュスの絵には様々なキーワードが散りばめられている。マチエールに対するこだわりも伺える。影響をあからさまに画布に表現する、わかりやすい人でもある。詩人リルケの作品『ミツ』に付けた挿絵は最高だった。11歳のバルテュスに独創的な、しかし確固たる物語絵の世界が宿っていることがわかる連作だった。(実は今回の展示ではこれが一番よかった!)そういえば30年前、まだバルテュスは生きていたんだ。次にバルテュス展が京都にやってくるのはいつなんだろう。もしかしたら、また30年後かもしれない。そのとき私は83歳か。

今思い出したが、ずっと前にイラストレーターの藤田新策さんがイラストレーション誌に、1984年のバルチュス展についての寄稿したことがあった。確か「居ても立っていられずに東京から京都へ駆けつけた」という内容だった。その文章を読んで以来、藤田さんの仕事を興味深く見るようになったことがあった。


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by ekakimushi | 2014-08-03 22:01 | 絵のこと | Trackback | Comments(0)
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