776 <居場所>*
無くしたり、待っていてもやって来なかったり、
求めている時に知らん顔をされたり…。
大勢の中で、
会話に加われない唯一の人であったりします。
ゆっくりコーヒーを飲める喫茶店を捜しても、
どこにも入れない人であったりします。
出したハガキやメールの返信が、
待てど暮らせど返って来ない人であったりします。
空港の最終便に間に合わず、
薄暗い待ち合い室のシートにポツンと座る人であったりします。
混雑する美術館の人ごみの流れに、
どうしても入りきれない人であったりします。
待ち合わせ場所で、周りに待ち人が次々とやって来る中で、
延々と待ち続ける人であったりします。
閉店間際の銭湯の湯船につかっていて、
電気を消される人であったりします。
大事な話しをしている最中に、
相手に携帯電話がかかってきて会話の腰を折られる人であったりします。
外出する前はいい天気だったのに、
出た途端に雨が降り出す日が3日続く人であったりします。
絵の続きを描こうとしたら、
どこを捜してもその描きかけの絵が見当たらない人であったりします。
時々無くなるから、
いつも都合良くそばにあってほしいのが、
居場所だったりします。