794 <作家意識>*

例えば会社や役所勤めの人で、自社や自社製品、所属部署に強い自負を保っているという類いの人がいたとします。それは褒められこそすれ、貶められるものではないと私は考えます。あまりに強力過ぎると、鼻つまみものになってしまうことはありますが(笑)。口を開けば会社や上司の愚痴ばかりな人より、会話の相手としてよっぽど好感が持てます。これが作家さん相手だとどうなるのか。


ものを創る人間には、強い作家意識は不可欠だといいます。私もそう思う。何が作り手の制作活動を支えるかといったら、もの作りへの欲求と自負心ではないでしょうか。しかしそれを四六時中、全方位に乱射するのは、具合が良くないです。特にコミュニケーションが必要な場面においては。作家意識という厄介な代物を、めったやたらと人前にさらけ出して、その人が他者から疎んじられる様を目にしたことが何度かあります。


名刺に作家と書くだけでその人はもう作家である。これはとある評論家さんが云った言葉です。自称作家さんに対する、或る種の皮肉の意を込めた定義です。しかし決して皮肉だけではないところがあると思う。人はいつ作家になるのか?何かものを作りたいと思った時、その人は既に作家なのです。プロだろうがアマチュアだろうが、専業だろうが兼業だろうが。敷居の高さは、そのくらいのもんだと私は考えます。


そうなると作家さんを他者に信用させるものは作品しかないので、世のもの作りに勤しむ人は、みな結実目指してあくせく孤軍奮闘しているのだと思う。作家意識が作品の質を上回る人というのは、社員さんの会社に対する誇りや自負心は最高ながら、自社製品は今イチのものだったというケースと同じではないでしょうか。会社なら去ることができるけれど、ものを作る自分から去ることは、そう簡単なことではないでしょう。


作家意識というものは自分が保っていれば済むものだと、私は考えます。無意識にちらちら垣間見えることはあっても、それを意識して衣装にして見ていただけるのは、極限られた一部の人だけで、それも作為的に見られることに違和感を覚えないタイプの人のみでしょう。私としたら、こんな難儀なものは、心の引き出しに保管して、必要な時に取り出せるようにしておくのが一番。そんなことを考えた一日でした。

(*日記No.0158 2010年3月16掲載のリメイクです。)

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by ekakimushi | 2015-03-12 14:13 | 絵のこと | Trackback | Comments(0)
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