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812 <つぶやき音楽録Vol.4>

つい先日B.B.キングが亡くなりました。少し前にはベン・E・キングが、そのちょいと前にはパーシー・スレッジが、加瀬邦彦が、シーナが、イアン・マクレガンが…馴染みのミュージシャンたちが、もうどんどんいなくなってゆきます。だからといって私に何ができるでしょう。残ってゆくのは作品だけで、生身の人間は消えてゆく。それをわかって繰り返し聴いては、何かしらをつぶやくのでしょう。人によってはアルコールを片手に、人によってはため息を伴って。
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812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12382449.jpgトム・ウェイツ『娼婦たちの晩餐』
前作に引き続きボーンズ・ハウのプロデュース。評価されることの少ないアルバムだが、聴き応えが大いにある。正真正銘のライブだとばかり思っていたが、実は関係者を呼んで、レコーディングスタジオを酒と煙草と喧噪の安酒場に仕立てて録音したらしい。どうりで新曲ばかりなのに進行がスムーズだし、妙な野次も聞こえないはずだ。後にトム・ウェイツが全く飲めない男だと知ったとき、なにか納得できるものがあった。




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_123842100.jpg鈴木亜紀『Blue Black』
顎に一発食らった感じのライブを体験して好きになった。基盤は唄とピアノの確かさ、それにジャンルをものともしない個性が乗っかっている。根付くことを良しとしない旅人の視点をテーマに据え、聴き手の安住にじんわりヒビを入れてくれるアルバムである。どうやらボディにも、かなり効果的なのを入れられたようだ…






812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_1239923.jpgサム・クック・ウィズ・ザ・ソウル・スターラーズ『ゴスペル・トゥ・マイ・ソウル』
ほぼ年代順に曲を配置したコンピもので、ベスト盤ではない。初聴きのテイク違いもあれば、L.A.シュライン公会堂での有名な長尺ライブ「ニアラー・トゥ・ジー」も挿入!1950年代の熱きコスペル最前線が味わえる。日本最強の黒人音楽アナリストと評判も高い鈴木啓志氏の手によるコンピレーションも、ジャケが相当ショボいよ〜💦




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12393645.jpgポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド『ザ・リジュアレクション・オブ・ピグポーイ・クラブショウ』
前作の『イースト・ウエスト』は一度聴いたら耳から離れなかったが、本作は何回聴いても曲が憶わらない。1967年にして、ホーンを備えたバンドアイデアは斬新だっただろうが、如何せんオリジナル曲が今二つ。ブルームフィールドがいなくなった途端、カバー曲もインパクトが消えた。内容は下り坂と見るが、チャート的には彼らのベストだった。音楽は数字では表わせない。




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12395873.jpgザ・バンド『ムーンドッグ・マティーニ』
何を隠そう、ザ・バンドで最初に好きになったレコード。ここで初めて聴いた曲のオリジナルを追いかけて、R&RやR&Bの世界と接点を持ったようなものだ。まさしくカヴァー・アルバムの思惑のとおりに動かされた初心なファンでした(笑)。特にニューオリーンズものなんて、本作が完全な出発点だった。チターなしの「第三の男」だけはピンと来なかったが。素晴らしいアートワークのジャケットにも大いに心を動かされた。久しぶりに完コピしたくなったぞ!




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12401964.jpgジュニア・ウォーカー&ジ・オールスターズ『グルーヴィン・ウィズ・ジュニア』
バチもんCDなので、たぶん探しても売っていないと思う(笑)。モータウン後期のヒット曲は未収録だが、初期のガットバケット・ホンキー・サックスが目一杯聴けるし、なんといってもソウルフルなあの声!スティーヴ・ウィンウッドのVoって、レイ・チャールズ似というよりも、ジュニア・ウォーカーそのまんまという気がする。モータウンには珍しいバンド編成のグループで、ファンク・ブラーズがあまり介入していない。そのせいか、ノーザンソウルなのに泥臭くて心がざわめく。特にヴィック・トーマスの教会風のオルガンはとてもいい。

812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12403371.jpgフォー・シーズンズ『SHERRY & 11 OTHERS』
映画『ジャージー・ボーイズ』を見てからよく聴いている。デビューアルバムだが、今は売っていないようで、映画や舞台が良い機会になってほしいが、やっぱりフォー・シーズンズの扱いは昔と何も変わっていない気がして、寂しい限りだ…。ヴァリを筆頭に、プロのキャリアが10年弱はあるメンバーらだけに、デビューアルバムとはいっても、もう完成品である。カヴァー曲に顕著なヴァリ節が素晴らしい。唄の品格がもう別物です。




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12404973.jpgあがた森魚 『俺の知らない内田裕也は俺の知ってる宇宙の夕焼け』
曲が時空間を自在に移動して、聴き手のイメージを止めどもなく喚起させる、あがた森魚60歳のアルバム。夥しい地名や固有名詞が散りばめられ、聞いたこともないライムが頻発する。引き出しの多い音楽性と強力なイントロ、そしてVo.の力。老いと無縁の人とは、まさに彼のことだ。遊べる人にはとことん楽しい、創作力の勝利のようなアルバムだと思う。





812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_1241568.jpgブッカー・T&ザ・MG's『Hip Hug-Her』
文句無しのファンキーインストが少なくとも4曲はある。メンバーが出しゃばらず、引いたセンスの良さには脱帽する。当然ブッカー・Tの鍵盤が主役で、曲によってはアル・ジャクスンのどっしりドラムがメインになっている。スティーヴ・クロッパーの出番は驚くほど少ないにもかかわらず、決して埋もれない。カッティング・レベルの低さだけが難だな。あ、それとジャケがまるでフレンチポップスみたい(笑)。




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_124119100.jpgアイズレー・ブラザーズ『3+3』
オリジナルもカヴァーも全てアイズレー節で塗込まれておる。マーゴレフ&セシル初参加で、CBSでの一発目とくれば、気合いが入らないわけがない。今回聴いて思ったのは、アルバム一枚を繋ぐように聴かせてゆく曲間の微妙な間合い。当時のスティーヴィー・ワンダーのアルバムから着想を得たかな。タイトルとは裏腹に、演奏陣にブッダ時代からの助っ人が加わり、アルバム全体のふくよかさに大きく貢献している。私見ながら、75年に真の3+3体制になってからのアイズレーズは、意図的に懐を浅くして、奥行きを消しにかかった。セールスは上がったが、音楽は痩せてしまった。


812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12413551.jpgロビー・ファッキネッティ『Fai Col Cuore』
昨年21年振りにソロアルバムを出したロビー。彼の93年のセカンド・ソロ・アルバムで、イ・プーの音楽性をよりドラマチックに、より重厚長大に、よりクドく。私がドディ・バッターリア派だからだろう、曲調にしろアレンジにしろ、もう少し抜きやバリエーションがほしいと感じる。しかしだ、それをやると、たぶんイ・プーそのものになってしまうかも(作詞も故ヴァレリオ・ネグリーニだし)。




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12415380.jpgビューティフルハミングバード 『HIBIKI』
繊細かつ真摯、強引さを排除した訴えは痛くて儚げで、好き嫌いが大きく別れそうだが、絶大な支持があるとみた。どの曲も目の前の景色が大きく広がってゆく印象があるのに、品の良い小品の佇まいをしている。不思議だ。か細くもしぶとさを感じる声に、『Ladys Of Canyon』の頃のジョーニ・ミッチェルを連想した。






812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12421071.jpgクラレンス・カーター『This Is Clarenca Carter』
ドクターCCことクラレンス・カーター32歳にして、長年のドサ回り生活の後の、ようやくのデビューアルバム。収録12曲のうち、持ち味の明るく哀愁漂うミディアムナンバーが抜きん出ている。1967〜8年マッスルショールズはフェイムスタジオという環境で、若いが腕は達者なホワイトボーイばかりのスタジオミュージシャンに囲まれ、カーターの唄は若干荒っぽいが、おそらく納得のゆくレコーディングだったことだろう。




812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_12422358.jpgオリジナル・サウンドトラック『小さな恋のメロディ』
先日映画を見に行って、堪らなくなって聴いてしまった。懐かしさに思い存分に浸りましたよ。全曲の歌詞がストーリーと密接にリンクして、登場人物の心情や、あらすじの俯瞰へと誘導してくれる。ビージーズのバリー・ギブのヴォーカルがまだ地声で、私が大好きな時代だ。CSN&Y「Teach Your Children」最後の締めの一行は、何と温もりに満ちたことだろう。初めてこの映画を見たのは小学生の頃で、サントラを買ったのは中学生のときだった。もう遠い遠い昔のことなのに、未だに見て聴くんだな。好きというのは、朽ちないものだね。


812 <つぶやき音楽録Vol.4>_f0201561_1242352.jpgブラッド、スウェット&ティアーズ『3』
大ヒットした前作の模倣品?いやいや、敢えて姉妹作の佇まいを意識したのでは。キング・クリムゾンの『ポセイドンのめざめ』や、ポール・マッカートニーの『パイプス・オブ・ピース』と同じ位置付けをしたい。大学出のインテリ達が知的で洗練された演奏をする中で、現場の叩き上げボーカリストD.C.トーマスが泥臭く吠える。その対比が鮮やかで美しく機能して売りになっている。白眉は旧A面ラストの「ロンサム・スージー」で、最後の最後にトーマスの深い闇のようなため息が記録されている。毎回聴き惚れて、同じようにため息をついてしまう。
by ekakimushi | 2015-05-22 12:47 | 音楽えかきむし | Trackback | Comments(0)