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851 <残すと捨てるの間に何がある?>

今週は引っ越しの荷造り作業で、日常生活がどこかへ飛んでいったかのようです。予想はしていたものの、引っ越しにかかるいろんな労働力は相当なもので、しばし手を止めてため息混じりで実感しています。大きな家具を運ぶのはもちろん大変、本やレコードを段ボールに詰めるのはもっと大変、そして一番大変なのは残すか捨てるかの判断、その果てしない繰り返しの作業ではないでしょうか。

もう10日間ほどやっていますが、どっちともつかないものの多さに、いい加減呆れています。いるのかいらないのか、はっきりしろ!何度自分にそう怒鳴ったでしょうか(笑)。それでも本当にわからないものもあるのです。今の判断を信用できないものがあるのです。断捨離や整理名人の言い分に耳を傾けつつも、悩んで結論を持ち越し、引っ越し先でまた同じことをやらかすのでしょうか、私は。

そもそも、こんなにたくさんのものに囲まれて、全部が全部大切なはずがない。大切でもないのに、後生大事に背負い込んで、何か価値を見い出したいと願っている私の魂胆そのものに、大きな問題があるのはよくわかっています。私はいわゆる物質文明に毒された、哀しき現代人なのでしょう。そう思って居直って荷造りを続けて。その合間に、先日岡山マラソンを走ったのです。

レースが終わってシューズを脱ぐと、右足の五本指の靴下の人差し指が大きく破れて、そこだけ指が飛び出ていました。間抜けだなあと笑いながら、使い物にならないこの靴下をどうするか、汗を拭きながら考えました。捨てるなんて、とてもできない。これまで一緒に練習をし、一緒にレースを走ってきた靴下です。脱いで手に取ると、生暖かい。まだ気が籠っていました。

残すか捨てるかの間で心が揺れるのは、当たり前のことだと思う。止むに止まれぬ事情で判断を迫られるのは、現代を生きる私のさだめのようなものだ。時間に睨まれながら、大いに悩んでみよう。残しても捨てても、きっと後悔する。つまり、残すと捨てるの間にある後悔を、私はどちらか一方に押し付けようとしているだけなんだ。

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by ekakimushi | 2015-11-11 14:53 | Trackback | Comments(0)