887 <ふくらみ>

少し前に知り合いのバンドのライブを聴きに行きました。技量に評判のあるバンドで、初めて聴いた時は思わず前のめりになったぐらいです。その後何回か彼らの音楽を浴びる機会に恵まれて、その度身体が躍動するような気持ちにさせてくれます。で、今回も期待して出かけたわけです。

「ん?」私にしては珍しく首をひねったのは、彼らの演奏がいつもと違うように感じたからです。明らかにリズムが違う。ドラムやベース、パーカッションが作るうねりは同じなのですが、全体から伝わる印象はかなり別なものに感じるのです。少し堅い。柔らかさや軟度がもっとあるはずなのに。

演目2曲が終わって気がつきました。「ふくらみ」が不足している。その日ステージの上には、いつもはいるはずのギタリストが一名お休みだったのです。彼が担っている、バンドの音を包むような、弾力のあるバッキングがなかったため、全体像のふくらみが欠けていたのだと思う。

そのギタリストは、派手なソロはあまり得意なタイプではないのですが、裏方に回ってリズムの切り盛りを実に細やかにこなしていたのです。バンドが奏でる「ふくらみ」において、彼の貢献は相当に大きい。いないことで欠落部分がわかるのではなく、本当なら彼が演奏しているときにこそ、私は評価をするべきでした。

そして帰り道で自問しました。彼が黙々とやっていた「ふくらみ」を作る仕事を、私は自分の絵本のなかでできているのだろうか?「ふくらみ」がもたらすものは大きい。いくら合理性があっても「ふくらみ」がなければ、1+1=2の本しかできない。「ふくらみ」は意図して醸し出されるものばかりではない。意図しないで作られる類いのものを、いかに意図して引っ張って来れるか。「ふくらみ」について、己に問えば問うほど、萎んだ自分が露わになってくるのでした。

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by ekakimushi | 2016-03-25 22:38 | 絵のこと | Trackback | Comments(0)
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