人気ブログランキング | 話題のタグを見る

1070 <履歴書なんだよ、音楽は 3/3>

深夜放送を聴き始めた私は、そこに自分が知らない価値観が山のようにあることにすぐに気づきました。例えばテレビのアニメやドラマよりも、もっとおもしろいDJの喋りがあったり、聴いたことのない音楽やその情報があったりしたわけです。 当時は今のようにFM局が充実しておらず(特に私の田舎ではNHKFMのみ!)、ラジオといえばAMが主流でした。 受信状態は悪いわ、CMは多いわ、曲はワンコーラスで終わるわ、今思うといいところ無しなのですが、なかなかどうして、これが曲者で…


というのも、そのころはまだ日本の歌謡曲や演歌やフォークが主流。それプラス洋楽(それも英語圏だけでなくフランス語やイタリア語のものも結構流れていました)。 つまりラジオからは雑多という言葉が相応しいくらい、様々なジャンルの音楽が普通にオン・エアされていました。 そのおかげか画一的にならずに、どこの放送局もかなり勝手な独自のフォームで番組を安く作っていました。 森田健作の後にオージェイズ、その後浪曲が流れて締めはヨーロッパ映画のサントラというようなことは日常茶飯事でした。


そんな放送を聴いていたせいで、私の頭の中は雑多なジャンルの音楽が自然に同居するようになりました。 妙な先入観や食わず嫌いも少なく、何でも聴ける耳になったのはありがたいことでした。 洋楽でよく憶えているのはカーペンターズ、ミッシェル・ポルナレフ、レオン・ラッセル、ジュリオラ・チンクエッティ、エルトン・ジョン、T・レックス、グラシア・スサーナ、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツ、フランシス・レイ、ビージーズ、アダモ、ポール・マッカートニー、各種映画のサントラ(ゴッドファーザーやシャフト)、その他もういろいろ、ホントにいろいろ!


小学生六年生の頃は、ラジオとともにカセットテープレコーダーも大事な<三種の神器>のひとつでした。 性能は滅茶苦茶に酷いものでしたが、音を録音して残し、後で聴き返すことが出来るということ自体、私には驚異的でした。 最初に録音したのはテレビドラマ『太陽にほえろ!』のBGMです。 もちろんテレビのスピーカーから直にカセットに録音するので、家族には音ひとつたてるな!と厳しくいいつけて(笑)。 後年同じくテレビドラマの『傷だらけの天使たち』も録音、 この二つのドラマのサントラを買ったとき、両方とも井上堯之バンドの大野克夫によって作られているのを知り、強烈なカルチャーショックを受けました。


誰に教わったわけでもないのに、音楽の作り手が一致している二つのテレビ番組に嗜好が向かっていたことの不思議さ。(よく見ればエンドロールかなんかで、その名前はクレジットされていたはずなのですが…。) これは私にとってはかなりショッキングなことでした。 自分好みを肯定された気がしたというか、自分自身を認められた気になったというか。 どうやらこの辺りから、<自分の好きな音楽を聴くのが一番正しいことだ>という思い込みが始まったようで、恐ろしい限りです。 そして怒濤のエアチェック攻撃が幕を開けたのでした。


今やリバイバル扱いされるようになったカセットテープですが、当時はオープンリールと共に音楽ファンにとっては必携ものでした。 MDやCDにその役割が渡るまで、結局私は1200~1300本ぐらいのそれが溜まったと記憶しています。 小学校の時に録音した最初の45分テープ3本は、一生忘れることができないでしょう。 それぐらい繰り返し聴いたし、朝起きて今日も自分が作ったカセットテープを聴けるのが心底うれしかった! これが10本になったら、100本になったら、もっと聴きたいテープや音楽が増えるのだと思うと、ウキウキしたものでした。 しかし、それは大きな間違いでした。 持っているテープが10本になろうが、100本になろうが、1000本になろうが、その時聴きたいのは、いつも3本だったのです。 そんなこと、あの頃はわからなかったもんなぁ…。


1070 <履歴書なんだよ、音楽は 3/3>_f0201561_18314277.jpg



















by ekakimushi | 2018-03-11 18:38 | 音楽えかきむし | Trackback | Comments(0)