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1101 <アリーサのいない世界>


先月亡くなった人で最も喪失を感じたのはアリーサ・フランクリンです。(アレサではない。アレサは和英語だと思う。英語の発音は、どう聞いてもアリーサだ。)私がソウルミュージックにのめり込むようになった1980年代後半は、アリーサにとってはあまり良い時代ではなかったと思います。長い活動を経て勢いが落ちてきた頃で、音楽機器の進歩のせいであの声が活きなくなった時代でした。肉親の死もありました。それでもアリーサはアリーサだった。87年の『One Lord One Faith One Baptism』は72年の『Amazing Grace』から15年を経てもアリーサが頭抜けたゴスペルシンガーであることを証明していました。

後追いの形で私が60年代〜80年代半ばのアリーサを体験して確信したのは、オンタイムであの唄を浴びた人はどれほど興奮しただろうかということでした。羨ましいなどという言葉ではとても伝えきれない。もしあの唄を十代で聴いていたら、耳が不感症になってしまったかもしれない。あれは神様からの贈り物としか考えられません。疑いの余地はないです。彼女はピアノの演奏も鳥肌が立つぐらいに素晴らしい。作曲の才、アレンジの能力も超一級品です。しかしアリーサはあの声を持ってしてアリーサ・フランクリン足り得たのです。2018年8月、それが永遠に失われたのです。

今から13年ほど前に音楽のメルマガ用にアリーサのことを書いた文があります。それを載せて追悼にしようと思います。
心より冥福をお祈りします。


『音楽教師着任』

A月B日(はれ)
きょう、がっこうにあたらしいせんせいがやってきました。アリーサせんせいといって、ふとったおおきなひとです。たいいくかんでこうちょうせんせいが、みんなにアリーサせんせいをしょうかいしました。するときゅうにアリーサせんせいはピアノをひきはじめ、おおごえでうたいだしました。なにごかわかりませんが、だんだんサブイボができました。なんかきもちがブルブルして、とびはねたくなりました。そしたらとなりのしげるくんが、「ギャー!」といってわめきました。みんなおなじきもちだったみたいで、たいいくかんはもうおおさわぎになりました。

C月D日(くもり)
アリーサせんせいのじゅぎょうはすごいです。おんがくしつでてびょうしで、ひとりずつたって、せんせいといっしょにうたいます。さいしょはみんなしずかでしたが、だんだんこえがおおきくなってゆきました。ぼくはこくばんにかいてあるR-E-S-P-E-C-Tを、いちばんおおきなこえでさけびました。そのいみは、ひとをうやまうことだとせんせいはいいました。きがついたらほとんどたったまま、45ふんがおわりました。じゅぎょうのあとは、いちにちじゅう、じっとしていられませんでした。ぼくはおかしいのかなあ。

E月F日(はれ)
かていほうもんのひです。おかあさんはきんちょうしていました。アリーサせんせいがくると、おかあさんは「ハレルヤ!」とさけびました。せんせいはげんかんで、いつもの『オー・ハッピー・デイ』をうたいました。そのあとせんせいのことをいろいろききました。せんせいのおとうさんは、ゆうめいなぼくしさんだったそうです。そのうちきんじょのひともあつまってきて、せんせいはにかいのまどからうたいだしました。マイクもないのに、すごくひびきました。かていほうもんなのに、うたってばかりのせんせいでした。

G月H日(あめ)
テストのひです。アリーサせんせいのピアノにあわせて、たのしくうたうテストです。じぶんのばんがくるまでは、ドキドキしていました。でもうたうときにせんせいが「カモン!」というと、じぶんのしらないこえがかってにでてきて、どんどんうたがわいてきました。からだもきもちもあつくて、どこかをグルっとまわってきたかんじでした。うたいおわったら、せんせいはとてもうれしそうに「ビューティフル!」といってくれました。あれだけふっていたあめがやんで、にじがかかっていました。

I月J日(はれ)
きょうアリーサせんせいはアメリカへかえります。さいごにせんせいをおくる『エイント・ノー・ウェイ』をみんなでうたいました。はなたばをわたすと、せんせいのおおきなめからポロポロなみだがながれていました。アリーサせんせいにであってよかったです。これまでおんがくのじゅぎょうはたいくつでしたが、いまはだいすきです。うたうことがたのしいって、しりませんでした。ぼくはおおきくなったらソウルのかしゅになりたいです。そしてアリーサせんせいとデュエットしようとおもっています。おしまい。









































by ekakimushi | 2018-09-02 22:45 | Trackback | Comments(0)